2005年 06月 18日

恵まれない子供たちのためのヘッジファンド・・・

先日のエントリー証券取引所を巡る攻防でも触れたヘッジファンドThe Children's Investment Fundについて、忘れないうちに書いておく。





 The Children's Investment Fund (通称"TCI")
 ・在ロンドン
 ・2003年運用開始
 ・運用責任者Christopher Hohnは米系の名門ヘッジファンドPerry Capitalの欧州での
  運用責任者として名を馳せた。
 ・Hohn氏のPerry時代の名声も手伝って、ファンド設立時にいきなり7億㌦近くの資金を集め、
  現在の運用資産は早くも30億㌦以上に達しているといわれる。
 ・運用成績は好調。2004年は40%以上のリターンを上げており、EuroHedgeという欧州の
  業界誌から"Fund of the Year"の表彰を受けた。
 ・運用手法はいわゆるアクティヴィスト。3年から5年のロックアップをつけて、欧州、アジアの
  企業を対象としたバリュー投資を行い、『モノを言う株主』として潜在的な企業価値の引き上げを
  働きかける。東京を席巻しているMACやSteelPartners、Symphonyといったマネージャーと
  同じアプローチである。昨年は韓国のKT&G(元韓国たばこ人参公社、2002年に完全民営化)、
  今年はDeutsche Börse(フランクフルト証券取引所などを運営)などの経営陣がその“餌食”と
  なっている。先日ご紹介したDeutsche Börseの件でも、Googleで“Christopher Hohn”で
  検索してみると、ヒットするのはドイツ語のサイトばかりが目につく。ドイツ語がわからないので
  残念ながら記事の内容は不明だが、過去半年間のTCIと取引所との壮絶なバトルがドイツ国内で
  どれだけセンセーショナルに受け止められたか、ということを物語っているのではないだろうか。

派手な立ち居振る舞いが目立つが、TCIの最大の特徴は、やはりその名の示す通り、手数料収入の一部を発展途上国の貧困状態にある子供達の支援に充てていることであろう。具体的には、運用手数料(運用資産に対して年率1%)の半分とファンドの運用成績に応じてプラスα)の金額を、Hohn氏の夫人が運営する基金Children's Investment Fund Foundationを通じて、各方面への寄付やマイクロファイナンスに充当している。

基金のウェブサイトを眺めてみても、ナイロビに常駐スタッフを配置したり、UNICEFのHIV/エイズ対策プログラムの責任者を含む途上国支援の専門家を基金のアドバイザリーボードに迎えるなど、それなりのオペレーションになっていることがわかる。支援先は以下3つの分野になっているようだ。
①エイズ/HIV: ケニア、ウガンダ、マラウィ、エチオピア、インドの子供達のエイズ/HIV関連
 支援プログラムへの寄付
②マイクロファイナンス: 最貧層の子供達の健康・栄養・教育の向上に寄与する分野で、
 かつ資金使途や計画性、事後の効果測定等といった面でのtransparencyが確保できる組織への
 融資または支援プログラムの立ち上げ
③災害支援: 恒常的な支援ではないが、適切と認められるものがあれば検討


勿論、ヘッジファンドの中には、会社として、或いは運用者個人として、慈善事業に多額の寄付をしているところも少なくないため、TCIだけが奇特な存在という訳ではない。そのため、TCIの謳い文句は所詮は偽善だ、売名行為だ、営業用のセールストークに過ぎないなどと皮肉を言う向きもある。マーケティングにそれほど効果があるとは思えないが(投資家から見れば、TCIを通じて間接的に寄付しなくても、他の投資から上がる運用収益の一部を自ら寄付すれば良いし、その方が節税メリットもある)、風当たりの強い運用手法を用いているだけに、『恵まれない子供たちのため』という大義名分を掲げることで、メディアからの批判を和らげる効果はあるかもしれない。実際、昨年分のみで1800万㌦(ざっと20億円!)を寄付に充てたという事実はそれなりのインパクトを持つ。

Hohn氏の真意がどこにあるのかわからないが、氏の夫人は当基金の設立以前から途上国支援活動に従事してきた人のようなので、TCI設立の経緯においては、夫人の意向・影響も大きかったのであろうか。
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by th4844 | 2005-06-18 04:05 | Hedge Fund


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