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2005年 03月 27日

ヘッジファンドは投機的資金を嫌う?!

ファンド・オブ・ファンズにおけるポートフォリオ構築プロセスについて書いてみたいと思っているのだが、その前に、ヘッジファンド投資におけるカギである解約条件(=Liquidity)について触れておく必要があろう。

ヘッジファンドは銀行の窓口で買える投資信託と違って、毎日売ったり買ったりすることは出来ない。解約出来るのは、せいぜい月に1度(Monthlyなので“M”)か四半期に1度(Quarterlyなので”Q”)である。しかも解約予定日の30日前や60日前迄に解約通知を事前に送付することが求められるため、一旦ヘッジファンドに投資すると、解約するには短くても1ヶ月、長ければ半年以上かかる。ヘッジファンドが解約頻度を制限する理由は2つある。簡単な話で、解約に応じられないか、或いは解約に応じたくないかである。
それにしても、冷徹な投機の権化のようにメディアで揶揄されることも多いヘッジファンドといえども、実は投機的資金を嫌い安定志向が強い、と言ったら違和感があるだろうか。




解約に応じられないというのは、解約を受け付けたくても、ポートフォリオの一部を取り崩して現金化するのに時間がかかってしまうということである。これは、複雑なP/O、I/O、PACといったモーゲージデリバティブや、セカンダリーマーケットの無いプライベートレンディング(要するに貸出債権)、ディストレス証券などの市場で流通していない資産、もしくは一部の小型株のように流通性の極めて乏しい資産を投資対象にしているヘッジファンドに見られるケースである。解約通知を受領してから実際の解約日まで3ヵ月あれば、流動性の低い資産でも、そのうちリーズナブルな価格で譲渡可能であろうが、解約通知を受け取ってから2日以内に資産を取り崩して現金を作らなければいけないとすると、何としても誰かに買い取ってもらわねばならない。買い手がいないのに売らなければいけないということは、誰かに投げ売りするしかないということである。特に、セカンダリーマーケットの無いようなニッチな分野ではプレーヤーの数も限られているためお互いの手札も大体読めてしまう。そんな状況で焦って資産を売り急ぐような真似をすれば徹底的に買い叩かれるのは必至で、必要以上にファンドの基準価額を毀損してしまう。従って、流動性の無いものに投資しながら無理のある解約条件を投資家に約束するような行為は、結果的に投資家を裏切ることになるため、ヘッジファンドがある程度解約条件を制約することは理に適っているのである。

こうした必要に迫られて解約条件を制限するのに加えて、ヘッジファンド側が安易に解約に応じたくないために、敢えて厳しい解約条件を設定することもある。米国株のロングショート、しかも大型株中心のポートフォリオにもかかわらず解約条件をQ-90としているマネージャーなどはこうした意図がありありと見て取れる。また、最近は1年間のロックアップを設けるマネージャーも散見される。ファンド立ち上げ時には、投資家が優位な立場にあるため、ヘッジファンドの投資戦略に鑑みて無理の無い程度の解約条件(株式ロング・ショートならM-30やM-60、アービトラージならQ-30やQ-60など)を設定しているが、運用開始後1年程度の間に順調に受託資産額が伸びて3-5億㌦に達したあたりから、従来の投資家(創業以来の贔屓客)からの追加投資については従来通りの解約条件を適用するものの、新規顧客については、ロックアップ付きでしかも解約条件の劣後するシェアクラスを新設して、そちらのみで募集を行うといったケースが典型的な例であろう。つまり、ヘッジファンドの方でも、客を慎重に選んでいるのである。2000年前後からヘッジファンドへの資金流入が急増しているが、その資金の出所の大半は『よくわからないけど、流行ってるみたいだから取り敢えず10百万㌦くらい投資してみるか』という“お試し投資”の段階にある小規模な投資家である。こうしたブームに乗った資金(return chaser とか hot moneyなどと揶揄されることが多い)は、流入のペースも然ることながら、投資しているヘッジファンドのパフォーマンスが一時的にでも他社を下回った場合、はたまたヘッジファンド業界に何か不測の事態が起きた場合の引き揚げのペースも相当速いことが予想される。他の業界の経営者と同様に、独立して自らのヘッジファンドを立ち上げたマネージャーの多くは、自らのビジネスの存立基盤はある程度安定したものであってほしいと願っているため、一過性のホットマネーの出入りに翻弄されるのは不本意なのである。こうしたマネージャーの観点から見れば、解約条件が多少厳しくても投資してくれる客や、独立後の運用実績(トラックレコード)が殆ど無くても、マネージャーの力量を信じて投資してくれる客など、長期的なコミットメントを持った玄人の投資家を重視したいというのは当然であろう(ファンド・オブ・ファンズは玄人ではあるものの、別の理由から必ずしもヘッジファンドに歓迎されないこともある。これについては別の機会に書く)。
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by th4844 | 2005-03-27 00:56 | Hedge Fund


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