2006年 07月 22日

英国の麗しき夏

緯度の高い英国の夏は、陽射しこそ強いものの気温も湿度も大して高くならないので、日本や東南アジアと比べると、随分とカラっとしていて気持ちの良いものです。私の敬愛して止まない銀行時代の先輩は、初夏にロンドンに赴任してきたので、毎日爽やかな太陽と緑と風を楽しみながら、『オレはなんて素晴らしい国に来たんだ!』と感激していたくらいです。

そんな素晴らしい気候のため、私の知る限りでは、英国の一般家庭にはエアコンも常備されていませんし、電車もバスもタクシーも、みんなエアコンどころか扇風機すらついていないというのがデフォルトです。




ところが、近年は英国らしからぬ暑い夏が多いため、地球の温暖化が顕著に進行しているなどということもよく耳にします。地球の温度が僅か数年間の間に3度も5度も上がったことは無いはずですが、生活実感としては、確かにどんどん暑くなっているのではないかという気になってしまいます。記憶に新しいところでは、2003年の8月の週末には、ロンドンの気温も40度近くまで上昇して、フランスでは猛暑で何千人だか何万人だかのお年寄りが亡くなったということもありました(彼の国はバカンスシーズンでどこにもお医者さんがいなかったからこそ、こんな凄まじい数字になったらしいですが・・・)。

実際のところ、今週も暑さがひどくて、水曜日の36度を筆頭に、連日30度を大きく上回る日が続きました。日本にいらっしゃる方なら、36度といっても大したことない水準なのだろうと思いますが、こちらに住んでいると、やはり凌ぐのが大変でした。

まず、そもそも日本を離れてもうすぐ4年。暑さに対する耐性そのものが大きく失われているのは疑いようがありません。ひ弱になってしまったというべきでしょうね。

次に、冷房無しの通勤電車というのはそれなりに凄くて、私の同僚が聞いた話では、地下鉄の車内の気温は50度近くに達しているそうです。私の住んでいるのはロンドンの中心から地下鉄で30分くらいのところなのですが、朝は6時半くらいの電車に乗っているので、まだそれほど暑くはありませんが、帰りの電車は本当に苦痛なので、地下鉄が郊外に出て地下から地上に出るや否や思わず外の風を求めて途中下車してしまうことも多々あります。地下鉄の駅では、乗客は脱水症状にならないように水を持って乗車するように、などというアナウンスが流れていますが、毎年驚異的なインフレ率で上昇する運賃の一部を使って冷房を導入しようという顧客志向の動きは微塵も見られません。また、さらに深刻な問題が、満員電車に充満する体臭です・・・。どこ系の民族が、とは申しませんが、汗が出やすい人や入浴が好きでない人たちもかなり多いらしく、これは鼻につーんと来るので本当にたまりません。もともとかぐわしい人たちが、室温50度の地下鉄の中で更に活発に汗をかくので、地獄の悪循環です。
日本にいる時には、台風の季節になると、天気予報を見ながら『明日は出勤できないかも』とか『今日は帰れなくなるかも』といった心配をすることもありましたが、こちらでは、『明日36度だって?!地下鉄乗れないじゃないか』みたいな会話がちらほらと聞こえてきます。まあ、帰りについては、涼しくなるまで外でずーっと飲んでればいいのですが・・・。

地下鉄以外でも、多くの商店や銀行・郵便局にも冷房が無いのでこれまた大変です。実は、銀行や郵便局では、顧客が汗だくになりながら長い行列を作っていても、ガラスで仕切られた向こう側(従業員が働くスペース)にはちゃっかり冷房がかかっているというケースも多いのですが、日本の銀行では混雑している時間帯にテラーのお姉さんが椅子に座って作業をしているだけで批判されたりしている訳ですから、日本で生まれ育った私にはちょっと信じられない光景です。

いわゆる事務系のオフィスについては、どこの会社もそれなりの空調がついているはずですが、それでもそれらがきちんと動くという保証はありません。一番動いて欲しい時に、突然故障で動かくなったりするというのは実によく聞く話です。などと書いていると、ひとごとのようですが、かくいう私の勤務先も、昨日見事にクーラーが故障してしまい、今日はその修理のためになんと5時間もクーラーが止められてしまいました。当然ながら、『なんで平日に修理なんかさせるんだ!』と非難轟々だったのですが、『欧州の人間は、つい最近までずーっとクーラーなんか無しで生きてきたんだぞ。一日くらい大丈夫だろ』と笑顔のCEO氏。あのー、昔はオフィスにこんなにパソコンやらサーバーがゴロゴロしてたんでしょうか・・・。しかも、イントラネットのダイアリーでチェックしたら、そのCEO氏も含めてシニアなメンバーは示し合わせたかのように金曜日は全員出張か休暇で留守なんですけど・・・。私は、総務のおばちゃんに内線電話して、『1時間に一個ずつアイスクリームの差し入れがなかったら、オレたちも直ちに帰りますから』と、半分本気で抗議しておきました。その甲斐もあってか木曜・金曜ともに、従業員へのアイスの差し入れはありましたが、それにしても暑かったです。果たして修理は無事に完了したのか、そればかりが気がかりです。

自宅に戻れば、只でさえすぐにギャーギャー泣き喚く息子(お陰さまで10ヶ月になります)が、クーラーの無い熱帯夜で一層寝苦しいらしく、茹でダコのように顔を真っ赤にして、ものすごい汗をかきながら毎晩夜明け頃まで泣き叫んでいます。寝付けない子供もかわいそうですし、子供をあやすのに疲れてキレかかっている妻もかわいそうですし、その妻に怒られている子どももまたかわいそうで、いつもは子供が夜泣きしていても寝た振りを決め込んでいる私ですが、さすがに今週は何度か起き出して適当に子供をあやしています。

来月には少し休暇をとって家族で避暑に出掛ける予定なのですが、その頃には今度は急に冷夏になってしまっていて寒い思いをして帰ってくる、なんてことにならなければいいのですが・・・。私が銀行勤めをしていた頃に、天候デリバティブで気温の変動に伴う経済効果をヘッジするという商売が始まりましたが、天気そのものというのは絶対におカネで買えないものの1つですね。
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by th4844 | 2006-07-22 05:12 | London, UK, Europe


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