2006年 07月 08日

One year on

今朝は、ふと思い立って7時頃から30分ほどかけて
オフィスの近辺をあてもなく散歩してみました。

よく晴れた空には少しばかりの白い雲。

バッキンガム宮殿へとまっすぐに続く広い道の両脇には
背の高い緑の街路樹が並び、その下の砂利道には
Tシャツ短パン姿でジョギングする人がちらほら見かけられます。

まだ車のほとんど見当たらないその大通りを南へ横切って
セントジェームスパークに入ると、木々の葉に芝生の緑も加わるので、
視覚を通じていっそう涼やかな気分になります。

朝からベンチで寝転ぶ人、私のように少し早い朝の散歩を楽しむビジネスマン、
大陸欧州からの観光客と思しき家族連れなども目に入りますが、
まだこの時間だと人影はまばらです。

からっと乾いた心地よい風を時折顔に感じながら、公園内の小道を少し外れて
芝生の上をあっちこっちに蛇行しながら好き勝手に歩いているうちに、
久し振りに随分と晴れやかな気分になりました。



1年前の今日は、もっと暑かった気がします。




あれから1年。今朝の爽やかな散歩とは裏腹に、ロンドンの街は今も決して穏やかではありません。


『テロの抑止』を錦の御旗に、政府は有事法制や諜報活動を強力に推し進め、イラクとアフガンにおける軍事作戦も継続してきました。基本的人権や世界平和といった美しき調和の世界を希求し続けている人も決して少なくはありませんが、全体として見れば、『政府の施策に諸手を上げて賛同するとは言わないものの、背に腹は変えられぬので、しばらく多少のことには目を瞑るべき』というのが一応の多数派を保っています。今朝も右寄りの高級紙には『あの惨劇の悲しみを忘れてはならないが、テロを恐れるような言動をしてしまってはテロリストの思う壺だ』『警察も諜報もまだまだ予算や人員が足りておらず、本来的にマークすべきターゲットのうちほんの一部しか監視出来ておらず、このままではテロの再発を防ぐことは難しい』といった、どちらかというと勇ましい論調が目立ちました。自国の安全保障が現実的に脅かされているため、ひとことで言うと、今は戦時であって平時ではないという認識であらゆる物事が進んでいます。この辺りは、憲法改正がいよいよ視野に入ってきた日本も全く同じ雰囲気ではないかと推測します。かくいう私も、備えあれば憂いなしという考え方は、国の安全を守るものとして無責任な平和ボケよりも余程まっとうな態度だと思っています。

しかしながら、『そもそも、なぜ備えなければいけなくなっているのか』という問いに対しては、やはり英国の世論も大きく割れています。米国と同じく、ブレア政権の基本方針は『世界のどこかに悪い奴がいる限り、放っておくわけにはいかない』という立場にあります。アフガン、イラク、イラン、パレスチナなど、どこの紛争に関与する時にも『○○地域における安全保障だけでなく、わが国の安全保障にも甚大な影響をもたらす可能性があるので看過する訳にはいかない』というのが、今やすっかりブレア首相の口癖になっています(あいにく朝鮮半島がどうなろうとも英国には関係ないみたいですが・・・)。先日もブレアが世界各地で頻発するイスラム原理主義勢力による無差別テロに関して、『イスラム穏健派がもっと影響力を行使してくれないと困る。宗教権威が「テロは憎むべきだが、テロ実行犯がテロ活動に傾倒するきっかけとなった事情には同情の余地もある」といった隙のある態度を見せているようでは、いつまで経ってもテロは撲滅出来ない』と発言して、大きな波紋を呼びました。今朝の新聞に、『イスラム教徒は「米英がイラクやアフガンに侵攻しなければ、こんな風にはならなかった」とか言ってるみたいだけど冗談じゃない。ニューヨークに飛行機が突っ込む前に、私達は何もしてないんだし、そんなのただの屁理屈だ』という一市民の短いコメントが寄せられていましたが、これを読んでちょっと違和感を禁じ得ませんでした。

確かに、5年前のあの衝撃がこの戦争の始まりだったことに疑いの余地はないでしょう(それ以前からその火種は存在していたのでしょうが、顕在化したのは紛れも無くあの日であったという意味です)。しかし、ここまで報復合戦が泥沼化してくると、もはや『最初に手を出したのはどちらだったか』ということを論じることに、あまり意味は無くなってしまっていると思います。第二次世界大戦や冷戦の際には、清濁併せ呑んで『勝てば官軍』の論理で消化することが出来たのでしょうが、今回のようにいつまで経っても勝ちきれないでいると、仰々しく掲げたイデオロギーの綻びや胡散臭さが随分と目に付いてくるものです。

よく言われるように、私の知人も含めて“普通のイスラム教徒”というのは本当に平和を願う謙虚な人々だと思います。確かに、彼らの理性的な言葉がもう少し共感を集める世の中であってもいいのではないかと思ってしまいます。

これから向こう1~2年のうちに、世界の主要国では軒並みこれまで続いた長期政権が交代の時期を迎えることになっています。5年に亘って戦争を推進して来たブッシュ、ブレア、小泉といったタカ派の面々に加え、シラクやプーチン、盧武鉉、陳水扁といったキーパーソンも相次いで任期満了を迎えます。これらの指導者層が同時にガラっと変わった後、世界の景色はどのようになっているのでしょうか。
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by th4844 | 2006-07-08 08:42 | London, UK, Europe


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