2006年 05月 18日

あらためまして・・・ ①ヘッジファンド業界のこれまで

このブログへのアクセス数が急増しております。きっとharry_gさんのウォールストリート日記で改めてご紹介頂いたお陰ではないかと思います。毎度のことながら大変恐縮です。私はヘッジファンドへの投資を専業とするファンド・オブ・ファンズ運用会社に勤務していますので、ヘッジファンドのことをよく見聞きする立場にありますが、しかしインサイダーではありません。ただのメジャーリーグ通がメジャーリーガーとは全く違う生き物であるように、私に出来ることは外から見た様子を描写することくらいです。しかし、それほど深くなくとも広く業界全体を見渡すのが仕事ですから、今後も業界のトレンドなどについては少しはそれらしいことがお伝え出来るといいなと思っています。

さて、年初からのヘッジファンドのパフォーマンスを見ると、日本株ロング・ショートは昨年の反動もあってやや苦戦中ですが、残りの戦略は概ね快調なようです。弊社の投資対象ユニバースの中でも、昨年宣伝した通り、欧州株ロング・ショートは特に好調です!せっかく足許のパフォーマンスが落ち着いているので、目先の心配をしなくていいうちに(笑)、少し長い目でみたヘッジファンド投資の来し方と行く末、そしてそこで私の勤務先のようなファンド・オブ・ファンズが果たせる役割などについて、思うところを書いてみたいと思います。




まず、それまでひっそりと行われていたヘッジファンド投資が初めて本格化したのは90年代と言ってよさそうです。92年にジョージ・ソロスのクォンタムファンドがイングランド銀行を打ち負かしたのがひとつの象徴的なイベントとして知られていますが、ソロスの他にも、ジュリアン・ロバートソンのタイガーファンド、ケン・グリフィンのシタデルといった伝説のファンドが90年代を通じて驚異的なリターンを上げていました。投資戦略で見ると、やはりグローバル・マクロが一番目立っていましたが、投資銀行のプロップデスクを出てきた(または追い出されてきた)アービトラージ戦略のトレーダー達も次第に猛威を振るうようになります。CBアービトラージ、債券アービトラージ、リスクアービトラージなどの運用手法の登場がいかにセンセーショナルであったかは、ソロモンブラザーズのジョン・メリウェザー(後にLTCMを設立)や明神さんのチームの武勇伝を取り扱った一般向けの読み物を通じて後に広く知られるようになりました(もちろんソロモンはヘッジファンドではありませんが・・・)。とはいえ、こうした一握りのスタープレーヤーの名前こそメディアに登場していたものの、この頃のヘッジファンド業界というのはまだ知る人ぞ知るという世界で、当時ヘッジファンドへの投資に積極的だったのは、米国の個人富裕層・ファミリーオフィス、あとは一部の先進的な基金や大学、そして日本の最大手クラスの金融機関くらいだったと聞きます。

98年夏のロシア危機によってLTCMが破綻したところで、この第一次ヘッジファンドブームは終わるのですが、その僅か数年後に今度はITバブルが崩壊したために、一度出て行ったはずのリスクマネーは再びヘッジファンド業界に回帰してきました。これが第二次ヘッジファンドブームの始まりです。90年代のブームの際にはまだ耳年増なだけの人も多かったようですが、今次のブームは、なんと言っても投資家の裾野の広がり方が違います。まず、従来の主役であった個人富裕層に加えて、株安・低金利という厳しい運用環境と自身の抱える長期負債のミスマッチに喘ぐ生保や年金基金の投資が急増します。続いて、景気低迷で貸出ポートフォリオの圧縮を余儀無くされた銀行や地域金融機関などが新たに投資を開始し、中堅の損保等もこれに続きます。そして、最近は富裕層だけでなくいわゆるリテールの普通の個人投資家の資金の流入も始まっています。いわば、猫も杓子もヘッジファンドだ、マーケットニュートラルだ、アブソリュートリターンだと言ってお祭り騒ぎです。そして、需要があるところには必ず供給が生まれます。投資家サイドのヘッジファンド熱の高まりに合わせて、ヘッジファンドを開業する人が毎年それこそ雨後の筍のように増殖しています。

ところが、さすがにこれだけ込み合って来ると、ヘッジファンドの世界の景色も随分と変わってきました。

(次回に続きます)
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by th4844 | 2006-05-18 04:53 | Hedge Fund


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