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2006年 01月 24日

ライブドアショックに思う

ライブドアの件は、何か書いておこうと思いながら、いつの間にか随分と日が経ってしまいました。ナイーブ過ぎる物言いなのでしょうが、なんだか人間の最も嫌な部分を見せられた気がして、あまり気が進まなかったのです。

もちろん、堀江氏に幻滅したなどというのではありません。メディアでほぼ確報のように喧伝されている一連の嫌疑について具体的に私が予想していたかと言えばNoですが、しかし彼の危うさというか脇の甘さというのは誰もが始めから感じ取っていたはずであり、ある程度は織込み済みであったはずです。また、2000年前後の前回の日本のITバブルや米国のエンロン事件を例に引くまでもなく、世間の注目を一身に集めた人たちがその絶頂に達したかに見えた頃に衆人環視の下で醜聞の発露によって破滅的な最期を迎えてしまうというのも、決して珍しい現象ではありません。




私がつくづく幻滅したのは、地検特捜部が強制捜査に入ってからの周囲のオトナ達の反応についてです。ライブドアグループと取引をしたり同社グループに投資をしていた人達などは、そもそもそうした漠然とした不安をも考慮した上で、堀江氏にあやかろうという判断を下したはずです。勿論、想定していた中では最悪の部類に属する結末でしょうが(もはや真実がどうであれ、この1週間で彼と彼の会社は事実上社会的に抹殺されてしまったと認識しています)、それでも一度はリターンの期待値がリスクよりも大きいという判断をしたのでしょうし、もしも『そんなこと考えたこともなかった』『騙された』と大声で叫んでいる人がいるとすれば、それは自分の判断の甘さを曝け出しているようなものです。日本人であれば、サムライであれば、『リスクが高そうだけど、でもおいしそうなオポチュニティにくらっと来てしまった』そんな自分の甘さを恥じるべきではないでしょうか。また、この事件を利用して保護主義の正統性を唱えてみたり政局のダシにしようとしたりする人達が出てくるのは仕方無いにしても、彼らの感情剥き出しなコメントは全くロジックが成り立たない幼稚なものばかりが目に付きます。或いは、賢明または幸運にして今回は何ら損失を被らなかった人にしても、『ざまあみろ』という態度で余計な一言を発するのではなく、堀江氏のケースを他山の石として、自分は同じような失敗を繰り返さないようにと気を引き締めることが出来てこそ、初めて尊敬を集めることが出来ると思うのですが如何でしょうか。

さらについでに書いてしまいますが、リテールビジネスを展開している証券会社などは、常日頃から無垢な個人投資家の気を少しでも惹こうと、『みんなの株式市場』みたいな耳障りのいいことしか言いふらしませんが、株式投資というのは本来極めてリスクの高いものです。いくら投資家保護のためのルールを整備して強力なwatchdogを置いても最悪の場合には紙屑になる恐れがある、開示されている情報などには所詮は限界がある、というのが現実です。遣り切れない思いになるでしょうが、何かあった時には、求償権は税務当局よりも債権者よりも劣後する、胡散臭いリスクを全部引き受けるのが株主です。それでも、リターンが青天井なのにリスクは有限責任ということで、自分で事業をするよりは随分と使い勝手のいい、世紀の発明だったわけです。私の仕事はヘッジファンド投資を投資家に勧める立場にありますし、ある意味で尻込みしている投資家を“啓蒙”しなければいけない場面も多々あるのですが、リスクのあるものを『大丈夫です』などと言って売り込むようなマネは絶対にしたくないと心の底から思っています。それが後で必ずトラブルに繋がりますし、そうした想定外のトラブルが、却って投資家を臆病にしてしまうからです。

ちなみに、仮に犯罪が立証されたとすれば厳正に処罰されるべきですし、見せしめや狙い撃ちは『卑怯』『可愛そう』だからと言ってそれで罪が消えるわけでもありませんが、それでもホリエモンの“功績”に対する私の評価は(偉そうな言い方ですが、他に適当な言葉が見つかりません・・・)ある程度ポジティブです。もちろん、彼の言動に憧れたりマネしようと思ったことは皆無ですが、それでも日本の閉塞状況を打破する意味で彼のような『壊し屋』の出現自体は強く歓迎していました(同様の理由で小泉政権も一貫して支持しております)。古今東西の多くの壊し屋が、壊すだけ壊してあとは実にあっけなく悲劇的または破滅的にその社会的使命を(往々にして生命そのものも)終えていますが、社会はその後に残された人たちの苦労によって必ず一歩前に進むことが出来ます。また、壊し屋はその壊しっぷりだけでなく、皮肉なことに自身の壊れっぷり(?)からも、残された人達に多くの教訓を残してくれたりもするものです。せっかく、ホリエモンがいろいろなものを目茶目茶に壊してくれたので、次の一歩が凄く大切だなと感じています。報道関係者には、そういった視点からの建設的な問題提起を切に望みます。
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by th4844 | 2006-01-24 08:30


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