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2005年 09月 03日

欧州系ヘッジファンドにもっと投資すべき理由

現在、全世界のヘッジファンドの運用総額は1兆㌦以上と言われており、それもここ3-5年くらいの間に倍増したというのが定説である。依然としてその大半が米国市場を投資対象としているものの、一方で、欧州やアジアを投資対象とするヘッジファンドも急増している。欧州を投資対象とするヘッジファンドについて言えば、運用総額は2003年に1000億㌦を超え、2004年には倍増して2000億㌦を超え、今年中には3000億㌦を超えると見られている。3年で3倍というユニバースの急成長に対して、大手のファンド・オブ・ファンズや機関投資家のヘッジファンド・ポートフォリオにおける欧州系ヘッジファンドの組み入れはまだまだ少ないようであるが、欧州のヘッジファンドへの投資にもう少し前向きになってもいいのではないだろうか。今後の欧州向け投資の増額を正当化できそうな理由をいくつか挙げてみたい。



世界最大の“Single Market”としての汎欧州市場の誕生

昨年5月に新たに10カ国が加わったため、EUの加盟国は25カ国へと急増した。この拡大EUは5億人の消費者と13兆㌦のGDPを擁する巨大な単一市場であり(いずれも米国をも凌駕する)、現在各方面において“標準化”という名の“汎欧州化”が急ピッチに進展している。そして、Pan-Europeというフレームワークが出来上がりつつある中、各国市場の上位企業同士による欧州チャンピオンの座を巡る熾烈な競争が展開されており、このあたりは、各国リーグの上位クラブが欧州チャンピオンズリーグを戦うというサッカーの世界と同じ現象と言える。また、国によっては段階的な移行期間を設けているとはいえ、中期的には新加盟国から旧加盟国へ安価な労働力が大量に流入することが確実視されている。こうした動きによって、すっかり硬直していた大陸欧州の労働市場の効率化と流動化が進むことになれば、企業の雇用政策に幅広い選択肢が提供されることになり、ひいては欧州企業の収益構造に変化をもたらすこととなる。ボーダーレスに優勝劣敗の生存競争が繰り広げられるアクティブな市場は、ストックピッキングを重視する株式ロング・ショート戦略のヘッジファンドにとって絶好の運用環境である。

次に、単一市場化の進展に伴う企業戦略の変化は、M&Aの増加という形でも顕著になっていて、とりわけ中東欧地域における現地企業の囲い込みや買収が激化している。或いは、別の見方としては、ここ数年間のリストラクチャリングの時代を経て、欧州企業のキャッシュフローは大きく改善したのだが、足許の景気が伸び悩んでいることもあって、その潤沢なキャッシュを内部成長のための設備投資に充当するよりも、M&Aによる外部成長に活路を見出そうとしているとも言えよう。いずれにしても、最近の欧州における企業合併の規模は80年代初頭における米国のそれと並ぶ水準にまで達している。また、背景について詳しくは承知していないのだが(恐らくは業績の頭打ちや相続問題を契機として?)、かつて隆盛を誇った同族系のコングロマリットが、その複雑な資本構造や株式持合構造を整理するケースも散見されている。企業再編や資本構造の整理もアービトラージ系のヘッジファンドにとっての格好の裁定機会となる。


構造変化が加速する理由

このように、EUの拡大と深化の進展を契機として、従来の欧州企業の生態系の秩序に大きな変化が起きているといえよう。さらに、こうした変化を一段と加速させている要因の存在についても指摘しておきたい。

まずは、諸般の法制度の変更である。その筆頭とも言えるのが2006年末から各国で適用されることになっている新BIS基準(第2次バーゼル合意)で、新基準適用開始までの限られた時間の中で、欧州の銀行の多くが、相当の貸出債権を圧縮するか中核的自己資本を増強することが求めらている。このため、銀行の貸出債権が魅力的な価格で市場に大量供給されており、ディストレス系のヘッジファンドにとっては格好の投資機会となっている。また、欧州の上場企業のディスクロージャーに関して、昨年12月からNew Transparency Directiveが、今年1月からは国際会計基準(International Accounting Standards)が相次いで適用されるようになった。こうした法制度の変更は、短期的な裁定機会の出現と中長期的な投資対象の拡大を意味しており、ヘッジファンドを含むアクティブ運用の投資家にとっては好ましい状況といえる。

ヘッジファンド・フレンドリーな市場環境の醸成を促進しているもう1つの要因は、市場における構造変化のファシリテーターともいえる投資家/市場参加者の出現である。例えば、敵対的買収の増加である。2004年の全世界の敵対的買収総額は2,500億㌦を超え、これは1999年に続いて史上2番目の水準だという。前年対比でも180%の大幅増加であるが、その最大部分を占めていたのが欧州である。敵対的買収の増加は、それ自体が企業再編をもたらすのは勿論のこと、まだ買収の直接的な対象となっていない企業に対しても、予防策として企業価値を強く意識した経営を促すことになるため、様々な企業の潜在的な価値をunlockするという間接的効果もある。これは、裁定取引を行うマネージャーのみでなく、バリュー型の投資を行うヘッジファンド(及び他のアクティブ投資家)にとっての収益機会の増加を意味する。そして、忘れてならないのが、プライベートエクイティのようなフィナンシャル・バイヤーの急増である。欧州では2004年にPEの投資額が前年比25%増の1,500億㌦に達した。かつては製造業と小売業がプライベート・エクイティの主な投資対象であったが、今や他の業種もその対象になってきている。100~150億ドル規模の案件で見ると、潜在的な買収ターゲットはおそらく100社を大きく上回ると言われているとか(この辺りの数字は自分で調べた情報ではないので、当方の誤認であれば是非ともご指摘頂きたい)。直接市場及び間接市場において、フィナンシャル・バイヤーが必要とする長期資金の調達が、以前よりも容易になっていることも、フィナンシャル・バイヤーの勢力伸張を後押ししている。


まとめ

こうして見てきたように、実体経済と金融市場の両面における様々な構造変化を背景として、欧州市場におけるヘッジファンドの数が、投資戦略の多様化を伴って増加してきた。これは、ヘッジファンド投資を行う投資家にとって、ヘッジファンド投資の資産配分における選択の幅が大きく広がったことを意味する。

また、米国・欧州・日本の各地域のヘッジファンドの収益率の相関は、同3地域の株式市場相関よりも低いことが知られている。従って、ヘッジファンド投資において適切な地域分散を実施することは、ヘッジファンド・ポートフォリオ全般の運用効率の向上に有効な手段となり得る。

ということで、欧州ベースのヘッジファンドへのエクスポージャー拡大に前向きになれた投資家諸氏には、是非とも一度弊社にご相談頂きたいものである・・・。
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by th4844 | 2005-09-03 09:14 | Hedge Fund


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